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院長通信

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もう一歩の手間

放っておけない、何とかしてあげたいと思う心が自利利他の医療の入り口
ということを前回の朝礼でお話ししました。

最近、こんなことがありましたと教えてくださった方があります。

認知症のある患者さんがある科を受診されました。いつもは付き添いの方と
帰られるのに、その日は付き添いの方が遅れて来られる予定だったため、
その患者さんがタクシーで1人で先に帰ってしまわれました。認知症がおあり
なので、いくらタクシーでも、ちゃんと自宅に戻られるか分かりません。

遅れて来られた付き添いの方に「○○さんは、タクシーで帰られました。
いったん、自宅でお待ちになられてはいかがでしょう」とお話ししても
止むを得ない状況です。

しかし、対応してくれたケアメイトのスタッフは違いました。タクシー会社
に1件1件電話し、患者さんの特徴を伝え「こんな人が乗って行かれませんで
したか」と尋ねてくれました。何件目かで心当たりのある運転手が見つかり、
どこそこのラーメン屋さんで降ろしたという情報が分かりました。そこで、
そのラーメン屋さんに電話で尋ねたところ、その患者さんがおられ、無事、
お家に帰ることができました。

リッツ・カールトンホテルの掃除担当者はお客様がホテル内で迷っておられ
たら、口で行き先を説明するのでは無く、掃除をその場で中断し、目的地まで
ご案内するそうです。何のために私たちは働いているのかという目的を自覚
していればこそ取れる行動と思います。

私たちの目的は患者さんご家族の安心・満足です。今回のケアメイトスタッフの行動は、放っておけない、何とかしてあげたいと思う心でお相手が安心されるところまで粘り抜いてくれた素晴らしい行動であり、自利利他の医療の一つの形です。

日常の業務の中で、これは私の仕事ではない、そこまではできないという場面があるかも知れません。しかし、もう一歩だけ手間を惜しまなければ患者さんの安心・満足を実現できる場面も多々あると思います。

いつも私たちの目的を意識し、もう一歩の手間ぐらいなら惜しまず実行できる
人になりたいと思います。

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