医療法人真生会 真生会富山病院

いみず総合診療専門医 研修プログラム 『みんな』が幸せになる医療を学びませんか?

自己への洞察を通じ、患者さんの「苦」の真因を見抜く力
プロフェッショナルとして、患者さんの未来を見通す力
これらを身に付け、患者/家族/地域
そして医師自身が幸せになる
―― それが当プログラムのコンセプトです。

目の前の患者さんから地域、世界へ、貴方の飛躍を応援します。

真生会富山病院は、人口9万人の富山県射水市の中心部に位置しております。
地域の人たちに安心・満足を届けるべく、外来・急性期病棟・地域包括ケア病棟・在宅医療を行っております。
国際医療・嚥下外来・認知症カフェや地域での講演活動も盛んです。ちょうど、料理のフルコースのように、専攻医として経験していただきたいことが、当院には詰まっています。

当プログラムは、「基幹施設1年→連携施設1年→基幹施設1年」合計3年のプログラムです。
機能強化型在宅療養支援病院(病床数99)である基幹施設で総合診療の基本を学び、3つの連携施設では「救急医療」「小児医療」「地域医療」を学んでいただきます。
また次のステップとして、「新・家庭医療専門医」研修プログラムも整えています。ぜひ合わせて履修し、学びを深めていただきたいと思います。

佐々木彰人近影

総合診療研修プログラム責任者 佐々木彰人(ささきあきひと)

初めまして、真生会富山病院の佐々木と申します。
当院の総合診療研修プログラムのホームページを訊ねていただいた事、有難く思います。

当院は99床の地域密着型総合病院として、地域にお住まいの方々と、当院のスタッフが、共に幸せになる道を模索し、奮闘しております。

日本は今、かつてない高齢化社会を迎えています。2050年には高齢化率が約40%に達し、その後も高水準で推移すると予想されています。医学の進歩、特に専門分化による発展は平均寿命を、約2倍に延ばすという輝かしい成果の一旦を担いました。しかし、人の命には限りがあり、私たちは皆、いつか最期を迎えます。多くの人にとって、人生の終焉には老いや病苦が避けられません。残念ながら完治が望めないこれらの苦しみを抱える人々を支え、共に幸せな人生を歩むための支援こそが、現代社会における喫緊の課題です。そして、これは日本のみならず、数十年後には世界共通の課題となるでしょう。

多様な苦悩を抱える患者さんに寄り添い、包括的に対応できる医師こそ、総合診療医です。社会が直面するこの重要な課題に真正面から取り組み、活躍する医師が求められています。当院の研修プログラムでは、総合診療医としての深い見識と豊富な経験を培い、日本、そして、世界で活躍できる医師を育成したいと考えております。そのために、力を尽くしたいと思っております。

研修プログラムでは、まず目の前の患者さんの苦悩と対峙し、見識を深めていただきたいと思います。研鑽を深めるにつれ、個々の患者さんのケアだけでは解決できない課題に直面するでしょう。その経験を通して、総合診療医としての視点は自然と地域社会へ、そして世界へと広がっていきます。

オンライン留学の様子

私自身、現在Johns Hopkins大学の公衆衛生大学院でオンライン留学をしています。
公衆衛生学を学ぶことで、目の前の患者さんだけでなく、地域全体の健康を見据える視点を養っています。さらに、地域医療に携わりながら最先端の臨床課題を研究し、その成果を世界に発信できる医師を目指しています。留学を希望する方には、当院として積極的に支援する考えです。

ひとりの患者さんを真摯に診ることから始め、地域、そして世界で活躍できる総合診療専門医へと成長し、自らも、関わる人も、ともに幸せになる――そんな道を共に歩めることを願っています。 この広大な世界、悠久の歴史の中で、少しでもご縁をいただけたことに感謝し、擱筆いたします。 願わくは、直接お会いできる日を、楽しみにしております。

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いみず総合診療専門医研修プログラムの特長

地域医療

1. 地域における当院のありよう

富山県射水市は、県内で第3位の人口規模を持ち、約9万人が暮らしています。
人口の密集地は、北の新湊地区、西の大門地区、東の小杉地区があり、当院は特に大門地区と小杉地区に近接しています。

誰もが、老い・病・死に向かっています。そんな、地域住民に、安心満足を届けるべく、当院は、外来・病棟・在宅・救急・健診という部門を備えています。それらの説明を通して、地域医療とは何か、研修プログラムで学ぶことは何か、お話ししたいと思います。

2. 地域医療とは何か:自分の過去と未来に思いを馳せる

生まれ、成長し、老い、病に罹り、旅立っていく。人生の中で、医療が果たす役割は何でしょうか。自分自身の、来し方・行く末に思いを巡らせてみましょう。

生まれた直後から、私たちは、先天性疾患のスクリーニング検査、ビタミンKの投与、予防接種、健診、小児医療を受けてきました。
成長すると、健康を維持するために、保健指導を通じて健康的なライフスタイルを身に付けたり、健康診断を通じて生活習慣病や癌の早期発見を目指します。突然の怪我や病気には、救急医療が対応します。
早逝や重度の障害はなくとも、老いの進展に伴い、段々と病に罹りやすくなり、外来に定期通院します。やがて入退院を繰り返し、訪問診療・緩和ケアを受け、旅立っていきます。

自分の来し方、行く末に思いを馳せると、自分の生は、多くの医療者によって支えられ、今後も支えられていくことが、感じられます。
住民としての自分達を支える医療、それが地域医療です。この考察から、地域医療を担う、総合診療医の果たす役割が見えてきます。

3. 当院の外来・病棟・在宅部門の現状と、共通した目的

当院外来では、一日約900人、年間約265,000人が来院しています。年間の救急車受け入れ台数は約1,100件です。
総合診療科の外来部門のミッションは、「避け難い、老い・病・死の苦しみに向かう、縁ある人が、幸せに生き抜くよう、支え導くこと」です。

当院の病棟は、40床の急性期病棟と、59床の地域包括ケア病棟に分かれています。年間、約3,900名の入院があり、入院・日帰りを含めて4,000件の手術を行っています。
地域包括ケア病棟では、「避け難い、老い・病・死の苦しみに直面し、入院が必要な人が、幸せに生き抜くよう、地域と連携して支援する」というミッションを掲げています。
在宅部門では、在宅統括室、訪問看護ステーションこころ、看護小規模多機能施設こころの家があります。在宅統括室は、「避け難い、老い・病・死の苦しみに直面する人が、望ましい場所で、幸せに生き抜けるよう、関係機関と連携して支援する」という目的の元に活動しています。

ここまで見てきたように、外来、病棟、在宅部門は、地域住民の状態に応じて、相互依存的に存在し、共に、「避け難い、老い・病・死の苦しみに向かう人が、幸せに生き抜くよう、支え導く役割」を担っています。

4. 総合診療医の役割と、研修プログラムの説明

総合診療医の役割は、この目的の元に、地域医療の中核を担い、外来・病棟・在宅・救急・健診、全ての部門で、横断的に活躍することです。
よって、これら全ての部門で活躍するための、基本的な知識と技術、経験を身に付けることが、研修プログラムの目的です。

「避け難い、老い・病・死の苦しみに向かう人が、幸せに生き抜くよう、支え導く役割」を果たすには、どのような知識や技術、経験が必要なのでしょうか。
病院には、様々な理由で、患者さんが来院します。しかし、何らかの苦しみを抱え、その解消を目指して来院したという点では、共通しております。その苦しみが、正確に同定されなければ、患者の苦しみが除かれることはありません。
よって、総合診療医にとって、不可欠な力は、患者の苦しみを聞く力です。この点は、重要ですので後述します。

患者の苦しみを聞くことが出来れば、それを分析し、原因を同定する必要があります。患者の苦しみの原因を、大きく身体的・心理的・社会的要因に分解すれば、それらに対応する知識が必要です。身体的要因を分析する知識とは、分子細胞生物学、解剖学、生理学を基盤とし、病理学、薬理学、治療学に進む、自然科学、臨床医学の知識を言います。心理的要因を分析する知識とは、心理学、精神医学をはじめとした、人文科学、人間の心への知識と理解を言います。社会的知識とは、生活環境、職業、家族背景、文化背景などを分析する、社会科学、一般教養を言います。
これら多分野に渡る、広範な知識を、どこから学んでいけばよいのか。それこそ、外来・病棟・在宅での実践を通じて、知らされることです。患者の悩みとの対峙の中で、疑問に思ったことを調べ、聞き、学ぶことが、地域医療に必要な知識・技術を磨き、経験を身に付ける過程そのものです。

当院の総合診療専門医研修プログラムでは、そのような、皆さんの成長・飛躍の過程を支援したいと考えております。本プログラムで、指導医が果たす役割は、実践の場の提供と実践後のディスカッション、フィードバックが中心です。また、皆さんの個性や、家庭環境、将来の希望に応じて、密度の高い経験が出来るよう、研修内容のマネジメントを行います。成長を促す為、地域医療の実践から、我々が身に付けた知識・技術や、多くの分野に通じるが、基礎的で習熟に時間のかかる分野も、日々のフィードバックや講義などで、出来る限り皆さんにお伝えしたいと思っております。
本研修プログラムでは、基幹施設である、真生会富山病院で2年間、連携施設で1年間研修を受けていただきます。連携施設での研修は、半年間、富山県立中央病院で、3ヶ月間、高度急性期救急の研修と、3ヶ月間の小児科研修を受けていただきます。また、半年間、かみいち総合病院または南砺家庭・地域医療センターのいずれかで、地域医療研修を行います。どの病院・施設においても、充実した研修を受けられることと思います。

5. 【聞く力】の重要性

先述したように、総合診療医にとって、相手の苦しみを【聞く力】が非常に重要です。
私たちは普段、友人同士で【おしゃべり】をします。価値観の似た相手と集い、相手の言葉に感情的に反応しながら、心地よい時間を過ごすことが【おしゃべり】です。しかし、【おしゃべり】と、相手の悩みを正確に把握しようとする【聞く】ことは異なります。【聞く】ためには、心構えと知識、そして訓練が必要です。
この技能は、研修の間にぜひ習熟していただきたい技術です。詳細は、ここでは書き切れないため、総合診療医の活動ブログに記載していきます。

6. 総合診療医としての喜び

相手の苦しみをよく聞き、その原因を同定し、それを、和らげ、取り除くことが出来れば、相手は満足します。まずは、聞く力を身に付けましょう。原因を同定する知識や技術が不足していれば、それを調べ、聞き、学んで身に付けましょう。相手の苦しみへの対峙は、自己を見つめる事に繋がります。相手の苦を取り除き、笑顔を届ける活動のまま、自己が知らされていく。それが、総合診療医として生きる、大きな喜びだと思います。共に同じ道を歩む日が来ることを、願っております。

国際医療

1. 当院の国際医療の取り組み

射水市は地方の中小都市です。その射水市にある当院が、国際医療に力を入れていることを、意外に感じられるかもしれません。当院は、日本教育財団による外国人受け入れ医療機関認証制度(JMIP)の審査を受けてきました。2018年に初回受審、2021年、2024年に更新審査を受け、いずれも合格しています。JMIP認証病院は、北陸では当院を含めて2病院、富山県では当院のみです。

外国人患者受入れ医療機関認証制度(JMIP)について

2. 国際医療のイメージ

国際医療と聞くと、どのように想像されるでしょうか。海外で病に苦しむ人に医療を提供する活動や、国際学会に参加し、英語で多くの外国人医師と、コミュニケーションを取る姿を思い浮かべるかもしれません。それも確かに国際医療の一部です。当院の医師は、その分野でも活躍しています。例えば、2024年6月には、当院の医師がカンボジアで小児麻酔のボランティア活動に従事しました。また、当院には年に1回ほど、ザンビアから、日本の医療を学ぶために視察団が来院します。中国人医師の、内科・眼科での研修を、多数受け入れてきました。国際学会での発表実績も、いくつもあります。

3. 当院の国際医療

文化や言語の隔たりがある人が当院のケアを通じて、笑顔になること

当院の国際医療で、中心的な部分は、「文化や言語の隔たりがある人が、当院のケアを通じて、笑顔になること」です。その思いは、国際医療の中核を担う、国際医療支援室のミッションに、「文化や言語の隔たりがある人が、真生会のケアを通じて、笑顔になれるよう、本人・スタッフを共に支援する」ことと、表現されております。

4. 射水市における外国人住民の背景

射水市の人口の、約3%は外国人です。パキスタン、ブラジル、中国、フィリピン、ベトナム、インドネシア出身の人々が、多く居住しています。射水市は日本海に面しているため、パキスタンの方々は日本の中古車を輸出する事業を中心に、約20年前からこの街に住み始めたようです。ブラジルの方々は、日系の家族や親戚を頼って訪日した人が多いです。中国の方はビジネスや技能実習が主な居住理由です。ベトナムやインドネシアの方は、技能実習生が多いです。

5. 外国人患者への医療提供の課題

当院には、1日あたり約15人の外国人患者が受診しています。外国人は、文化や言語の隔たりにより、医療機関の仕組みに戸惑い、意思疎通が難しく、トラブルが起きることがあります。
このことは、自分が外国の医療機関を受診することを想像すれば、理解できると思います。日本では、選定療養費を別にすれば、どの医療機関でも自由に受診することが出来ます。海外には、紹介がなければ受診できない医療機関が多くあります。知らずにそのような医療機関を訪れれば、門前払いされることも、あり得ます。また、自分の症状が上手く伝えられなかった、スタッフが早口の外国語で話してきて、何も理解できなかったということも、起こり得ます。

6. 文化・言語の隔たりを乗り越えるための取り組み

当院を受診する外国人に、どうすれば笑顔になってもらえるのか。それには、文化・言語の隔たりを乗り越える、仕組みが必要です。当院は、その為の、院内整備や教育活動に取り組んできました。外部の医療通訳に院内PHSから繋がる仕組み、機械翻訳のためのデバイスの整備、院内文書の翻訳、意思疎通のための指差し多言語シート、平易な日本語で思いを伝える「やさしい日本語」の普及などを進めてきました。その結果、富山県で唯一のJMIP認証病院となり、また外国人受け入れ拠点病院として認知され、補助金事業に参加するようになりました。

7. 国際医療と総合診療医の必要性

総合診療医が、国際医療に触れねばならない理由は、何でしょうか。出入国在留管理庁によると、2023年6月末の在留外国人数は約332万人、人口の約3%です。地域住民の中に、少なからず外国人がいる以上、地域医療を担う総合診療医には、国際医療の知識と経験が必要です。このような背景から、当院の研修では、国際医療についても学んでいただきます。 外国人患者への、医師としての知識、技術に加えて、希望がある方には、国際医療の仕組み作り、組織作りの方法もお伝えしたいと考えています。また、将来海外での活動を考えている方には、これまでの国際医療で培った人脈を基に、その活躍をできる限り応援したいと考えております。

研究・発表

1. 高齢化社会における課題

日本は先進国の中で、最も高齢化した社会と言われています。地方の中小都市である、射水市にある当院は、その高齢化社会の最前線に立っているとも言えます。少子高齢化は日本だけの問題ではありません。やがて多くの国が直面する問題です。未曾有の高齢化社会の中、如何に幸せな社会を築くか、総合診療医に課せられた、大きな課題です。

2. 当院の取り組み例:嚥下外来

その課題に向き合うために、当院ではさまざまな取り組みを行っています。一例として、嚥下外来を挙げます。
当院には、よく誤嚥性肺炎の患者が搬送されます。誤嚥性肺炎は、次のような機序で起きると言われています。初めに、軽度のサルコペニアにより、食べ物を飲み込みづらくなります。食事が十分に摂れないと、サルコペニアが進行し、更に食事が摂れなくなる、悪循環に入ります。低栄養による免疫力低下と、嚥下障害による誤嚥によって、肺に細菌が繁殖し、誤嚥性肺炎を発症します。肺炎を発症すると、炎症による消耗により、遂に重度の嚥下障害に至ります。この段階に至ると、残念ながら、嚥下障害からの回復は難しいことが多いです。
救急搬送される、誤嚥性肺炎の患者を診療するだけでは、患者にとって最も良い転帰は望めないことが、分かってきました。
そこで、数年前に、言語聴覚士や栄養士と共に、嚥下外来を立ち上げました。嚥下障害に悩む患者を早く見つけ、栄養療法と嚥下リハビリテーションを行うことで、低栄養とサルコペニアの進行を防ぎ、誤嚥性肺炎の発症を予防することを目的としています。近隣の医療機関や施設での広報活動や講演を通じて、この取り組みを広げていきたいと考えています。
2025年の日本病態栄養学会で成果を発表できるよう、栄養士が、演題登録を行い、採択されました。地域医療に資するものであれば、論文にまとめ、広げたいと考えています。

3. 研究支援体制

当院には研究支援を行っている医師が在籍しており、研究の設計や統計解析手法のアドバイスを受けることが出来ます。また、私自身もJohns Hopkins Universityの公衆衛生学修士課程にオンラインで在籍しており、まだ駆け出しではありますが、研究者としても活動しています。2024年8月には、WONCA APR(世界家庭医療学会の環太平洋学会)がシンガポールで開催され、「A case of mindfulness being effective in the treatment of chronic abdominal pain in an elderly patient」という演題で、発表を行いました。
研究や国際学会での発表、論文作成に関心がある方にも、当院は良い環境を提供できると考えております。また、Johns Hopkins Universityへの留学に関心がある方にも、出来る限りの支援をしたいと思っております。

4. 研究・発表の意義

研究や学会発表、論文作成は、医療の実践に伴って発見される、壁を打破し、その知見を共有するために行います。

真摯な総合診療の実践が、世界に新たな知見をもたらし、新たな笑顔を生み出すことに繋がります。自らも周りの人も、皆が幸せになる、総合診療医としての道を、共に進ませて頂けると、幸いです。

プログラム概要

プログラム責任者佐々木 彰一(在宅統括室室長、地域包括ケア病棟(眼科以外)医長、国際医療支援室室長)
研修期間3年(新・家庭医療専門医を取得する場合、合わせて4年)
研修場所真生会富山病院(基幹施設)、富山県立中央病院、かみいち総合病院、南砺家庭・地域医療センター

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活動レポート

当プログラムの活動をご覧いただけます。

いみず総合診療専門医 研修プログラム 活動レポート