医療法人真生会 真生会伏木クリニック

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院長ブログ

2023年4月24日(月)

ワクチンで撲滅できるがんがあります

令和5年4月から9価子宮頚がんワクチンが公費で接種できるようになりました!
−真生会伏木クリニックでも接種可能です−

がんは高齢者の病気と思われていますが、驚いたことに20歳台後半から40歳台という若い世代の女性がかかるがんがあるのです。子宮頚がんです。マザー・キラーとも呼ばれています。とても恐ろしい名前ですね。子宮頚がんは子宮の入り口にできるがんですが、日本で年間約1.1万人がかかり、毎年約2,900人が亡くなっています。特に他の年齢層に比較して50歳未満の若い世代の患者が増えていることが非常に深刻な問題です。

子宮頚がんの95%以上はヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスが原因であることがわかっています。HPVははるか昔からヒトからヒトに感染を繰り返し、すべてのヒトがHPVに感染しているパンデミックの状態がずっと続いています。HPVは新型コロナウイルスのように突然変異して姿を変えることはありません。HPVには200以上の型(種類)がありますが、多くの型のHPVは健康なヒトに対する病原性はありません。

一部の型は皮膚に良性のいぼを作ることが知られています。いちばんの問題は、特定の型のHPVに感染するとその感染病変が時に「がん」に進行することです。がんから検出されるHPVをハイリスクHPVと呼んでいます。具体的にはHPVの感染が女性に特有の子宮頚がんや、男性に多い中咽頭がんというのどのがんや肛門がんなどの原因になることがわかっています。HPVは体の表面(皮膚や粘膜)どうしの接触によって感染します。

HPVに感染しても症状はありませんし、ほとんどの人は自然に治ってしまいます。HPVに持続感染した場合、ごく一部のヒトが子宮頚がんを発症しますが、それまでの期間は、数年から数10年と考えられます。

2008年にノーベル賞を受賞したツア・ハウゼン博士はHPV16型・18型のハイリスクHPVが子宮頚がんの原因だと突き止めました。これ以外にも子宮頚がんの原因になる型はありますが、子宮頚がんの65%がHPV16型・18型が原因になっています。

博士はワクチンによってHPV16型・18型の感染を防げば、子宮頚がんを予防できると考えました。そして2006年にHPV16型・18型ワクチンが開発されました。
HPVは一度感染してしまうとワクチンによる効果はあまり期待できませんが、感染前にワクチンによる抗体をもてばウイルスを排除することができます。
HPVワクチンは大規模な臨床試験で、未感染者に対してはHPV16型・18型の感染をほぼ100%予防し、HPV16型・18型の前がん病変の発生をほぼ100%予防することが明らかになりました。

さらにスウェーデンの10歳から30歳の女性約167万人を調査した研究で、HPVワクチンは子宮頚がんのリスクを約1/3に下げることがわかりました。17歳未満で接種した人の中で子宮頚がんを発症したのはたった2人だけ(10万人あたり4人)であり、リスクは約10分の1に下がっていました。年齢が低いうちに打った方が効果が高いということです。

心配なのは副反応ですが、WHOはすぐれた安全性と有効性があると結論しています。注射部位の一時的な痛みや、腫れ、めまい、失神などの副反応はありますが、重いものはありません。

日本においては2010年度からHPVワクチン接種に対する公費助成が開始され、2013年4月から定期接種が始まりました。しかし、接種後に痛みや運動障害などの症状が報告され、マスコミに大々的に取り上げられました。その結果、残念なことにわずか2ヶ月後に定期接種のお知らせが対象者に届けられなくなってしまったのです。公費助成の接種対象であった1994年から1999年度生まれの女性のHPVワクチン接種率が70%程度であったのに対して、2000年度生まれの女性では接種率が劇的に低下し、欧米やオーストラリアと大きな差ができてしまいました。特に2002年度以降に生まれた女性では1%未満の接種率となっています。

しかし、HPVワクチン接種後のさまざまな症状はワクチンと因果関係がないことが明らかとなり、昨年4月よりようやく定期接種の通知が再開されました。
ワクチンの定期接種は小学校6年から高校1年相当の女の子が対象で、無料で受けることができます。さらに平成9年度から平成18年度生まれまでの女性のうち、HPVワクチンの接種を逃した方も無料で接種が受けられます。

9種類のウイルスの感染を予防できる9価ワクチンでは、1回目の接種を15歳になるまでに受ける場合は2回の筋肉注射で、1回目から6か月後に2回目を接種します。1回目の接種を15歳になってから受ける場合は3回の筋肉注射で、1回目から2か月後に2回目を、1回目から6か月後に3回目を接種します。ワクチン接種が受けられる医療機関は各自治体のホームページでたとえば「高岡市 HPV」などと検索するとわかります。真生会伏木クリニックでも接種ができます。希望される方は各医療機関に予約してください。

対象となる方には早めのHPVワクチン接種をお勧めしますが、接種は強制ではなく、あくまでご本人の意思に基づくものです。接種対象者やその保護者の同意が必要です。実際にワクチン接種を受ける際は、ワクチンの効果とリスクを十分に理解した上で、受けるかどうかご判断ください。

男性と26歳以上の女性はやや高額ですが自費での接種となります。男性にどうしてHPVワクチンが必要なのか?と思われるでしょうが、HPVは中咽頭がんというのどのがんや肛門がんなどの原因でもあるからです。26歳以上でも45歳までは希望する女性に接種可能としています。45歳までの方ではHPVワクチン接種による子宮頚がんの予防効果が示されているためです。

最後に大切なことですが、ワクチンを接種すれば絶対にがんにならないというものではありません。20歳以上の女性は2年に1回の子宮頚がん検診が勧められています。

詳しい情報をお知りになりたい方は稲葉可奈子さんという産婦人科の医師が代表理事をしている「みんパピ!」というインターネットサイトがおすすめです。「みんパピ!」と検索してみてください。

HPVワクチンについて質問や心配のある方は、お気軽に真生会伏木クリニックにお越しください。医師または看護師がご説明いたします。

【参考】

日本産科婦人科学会ホームページ
https://www.jsog.or.jp/modules/jsogpolicy/index.php?content_id=4

厚生労働省ホームページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/hpv_9-valentHPVvaccine.html

みんパピ!ホームページ
https://minpapi.jp 

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