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医療の原点がこの病院には息づいている。
副院長 刀塚俊起

副院長 刀塚俊起

医療を志したあなたの原点にあるもの

医療という職業を選んだ人は誰でも「苦しんでいる人を助けたい」「人を病気から救いたい」という志を持って、この道に入るのだと思います。
しかし、しばしば生活のため、安定した暮らしを維持していくためにこの仕事をしている自分がいることに気づく――そのこと自体は、けっして悪いことではないし責められるべきことでもないと思います。
けれども医療の道を選んだ以上、その初志をどこまでも忘れることなく、ヒポクラテスの誓いにあるように「純粋と神聖を持ってわが生涯を貫き」、患者さんに対して誠実に向き合って行かねばならない。それが医療の原点であり、医療者の責務です。
「真生会富山病院とは、どんな病院ですか?」と聞かれたとき、私は「自分が医療を志した時のことを思い出させてくれる病院ですよ」と答えることにしています。医療の原点が息づく病院、それが真生会富山病院です。

全ての職員が共通の価値観を共有

当院は1988年、医療の理想を実現しようとの思いで、初代院長・中野一郎先生が開設した病院です。
先生が目指した理想は、「抜苦与楽」と「和顔愛語」という言葉で表すことができます。医療の目的である苦しみを取り除き「楽」を与えること――これを達成するため当院のスタッフは、おだやかで親しみやすい表情や振る舞い、言葉つきで(和顔愛語)患者さんに接するのです。
当院には、医師、看護師、コメディカルといった医療専門職をはじめ、事務職、飲食施設の職員、そして建物のメンテナンスや庭の手入れなどを担当している設備職員にいたるまで数多くのスタッフが働いていますが、これら全ての職員が「抜苦与楽」「和顔愛語」という明文化された共通の価値観を共有し、それぞれの仕事に臨んでいます。
そしてこの価値観は、病院のあらゆる場所、あらゆる瞬間において発揮されている――そのことはこの病院を訪れる人々が共通して抱かれる印象です。
また転勤して当院に勤務するようになった医療スタッフからは「患者さんへの接し方が全然違う。これが本当の医療であり看護だ」と言ってくれる人もたくさんいます。
ただこの「当院ならではの風土、空気」は、なかなか言葉で伝えるのは難しい(笑)。
ぜひ一度、当院を訪れご自身の目と耳と五感で体験していただきたいと思います。

「医者にはならない」と考えていた高校時代

さて、私自身のことについて少しお話しします。
熊本で生まれた私は、県内随一の進学校に進みました。その高校では卒業生の多くは医学部に進学していました。「生活の安定」を求めてのことのように思えました。
そういう流れに反発する気持ちもあって私は「医者にはならない」と、大学は工学部に進学したのです。
ところが大学1年生のとき、私の人生は大きく変わることになります。
当時、病気になった人が「拝めば治る」といった妄言を信じて新興宗教に迷い込んで行く事件が起きており、そのさまを私は苦々しい思いで見ていました。そうしたおりに出会った一人の仏教の師が
「病気とか死への不安などが、その人をしてそうさせてしまうのだろう。医療は単なる技術であってはいけない。人の心の部分もケアできる、そういう医師が求められている」
と語ってくれました。この言葉が私の何かに火をつけたのでしょう。
私は京都大学を辞め、再受験で神戸大学の医学部に進学し、医師への道を歩み始めたのです。

ゼロから信用を積み重ねる

その後大学病院での研修を経て関西の市民病院や大学病院、がんセンターなどで内科医としての経験を積み、1998年より当院に勤務することになりました。
初代院長・中野先生の「患者を主体とした、本当に患者のためを考えた医療を施す病院をつくりたい」との思いに共鳴し富山の地を踏んだ私でしたが、最初は苦難の連続でした。
当初は、「かかりつけ」として来て下さる患者さんは一人もいません。
血液の悪性疾患とか白血病などが私の専門なのですが、胃腸炎とか風邪の患者さんばかり。たまに専門に関係する診断を下すと、次の日には、もう来られない。他の公立病院に行ってしまわれるのですね。「この病院でも十分治療できますよ」と説得しても「いや、申し訳ないがどこか他の病院を紹介してください」と言われる。涙を呑んで紹介状を書く日々が続きました(笑)。

まさに信用も実績も、ゼロからのスタートでした。ようやく3年経つ頃から徐々に患者さんも増え始め、今日では、こちらが診られないような病気でも「是非先生に診ていただきたい」と言ってもらえるようになりました。何事も「認められるまで10年」と言われますが、やはり私たちにもそれだけの歳月が必要だったのです。

患者とともに歩む病院へ

若い医療者の皆さんへのメッセージとしてひと言。
今日でこそ「医療面接」が医学教育に取り入れられるようになりましたが、基本的には学部では患者さんとのコミュニケーションを学ぶ機会はありません。研修医になってから見よう見まね、我流で学んでいくのが一般的です。そうして学んでこられた医療者にとって、当院の患者さんとの接し方はまさに“目からウロコ”の体験になると思います。
今後医療の世界は、これまでのように医師が「これをしなさい」と言えば患者さんは「はい」と従うパターナリズムの関係から、医師と患者が一体となって病と闘っていく平等な関係になっていくでしょう。患者さんの声をしっかりと聞き、患者さんとともに歩む病院、そのロールモデルとなれるよう、これからも努力を積み重ねていきたいと思っています。

広報課からのひとこと情報

  • その1 刀塚先生のもうひとつの顔は、なんと“ミュージシャン”。
    年1回、秋から冬に開催される「院内コンサート」では、先生の美声とギターテクを満喫できます。
  • その2 医局長を務める先生の目下の課題は「医師・看護師の働く環境の改善」。
    患者さんから圧倒的な支持を集めている「朝夕2回外来」をこれからも継続していくためには、職員の労働環境の改善も大きなテーマ。
    職員の増員やシフトの工夫など、先生の格闘は続きます。

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