病気と治療

眼科の病気と症状

睫毛内反・眼瞼内反・睫毛乱生

いわゆるまつ毛(睫毛といいます)のトラブルには、睫毛の生える向きが内側を向いている睫毛内反、まぶたそのものが内側にめくれこんでいる眼瞼内反、睫毛の生える位置がおかしい睫毛乱生、の3つがあります【図1】
それぞれ、原因や治療法が異なります。

【図1】

睫毛内反

先天性(生まれつき)の睫毛の問題です。
睫毛の生えている位置は正常なのですが、生える方向が内側に向いているために眼球に接してしまうものです。「生える方向が問題」の疾患です。

原因として、睫毛(正確に言うと立毛筋)を外に向けるための、穿通枝(上まぶたでいうと、二重瞼を形成しているもの)の発達が弱いことと、前葉(まぶたの前の部分:皮膚、眼輪筋など)と後葉(まぶたの後ろの部分:瞼板)のバランスがとれてない(前葉が過剰)、という2つの要素があります。

8歳頃までは自然軽快することもありますが、それ以降では改善は望めません。そのため、待てるなら8歳までは待ちます。目の痛み、充血、角膜の傷などの症状が強くて待てないお子さんや、8歳を超えても改善がなく治療希望のある方が手術適応です。

治療は、穿通枝の代わりとなるものの作成(二重を作る)と、余分な前葉の切除となります。
手術の方法は、糸を通して二重の作成のみを行う方法(埋没法)と、皮膚・眼輪筋を切除し皮下と瞼板の縫合を併施する方法(当院ではHotz変法)の2つがあります。
埋没法は、侵襲は少ないですが、再発が少なからずあります。
Hotz変法は、皮膚を切除するため侵襲が埋没法よりは大きいですが、再発が少ないです。
小児は全身麻酔が必要であり、全身麻酔までするなら再発しない方がよいと考え、当院では基本はHotz変法を行っています。
大人は日帰りか1泊入院、お子さんの場合は全身麻酔のため、3日間の入院です(手術前日に入院し、手術翌日に退院)。大人は1週間で抜糸しますが、お子さんは皮膚を吸収糸で縫うため、抜糸はありません。

睫毛内反では、内側の内反症が最も難治であり、内眼角贅皮(目頭を覆う皮膚のひだ)がある患者さんでは、目頭の形を変える内眥形成術も行わないと、再発しやすいです。
いずれの術式でも、目の印象は変わりますが、基本はぱっちりとした可愛い方向への変化のため、気にされる家族は少ないです。

ちなみに小児の場合は、睫毛を抜去するとより頑丈な睫毛が生えて症状が増悪することも少なからずあり、抜去はお勧めしません。抜去が必要なくらいの睫毛内反症は、手術適応です。

眼瞼内反

瞼板を支える組織が緩むために、眼瞼そのものが内側にめくれ、結果としてまつ毛が目に当たる状態です。ほとんどは加齢性に生じます。
垂直方向の弛緩(Lower eyelid retractors(LERs)という下瞼板を引っ張る腱膜の弛緩)と、水平方向の弛緩(内眥靭帯、外眥靭帯部分の弛緩)の両方が関与します。ですので、手術で弛緩を治すことが治療となります。

手術の時期は患者さんが希望された時ですが、自然に改善することは基本はないこと、年月が経つと治りにくくなり、めくれて目にあたる皮膚が結膜に変化し(皮膚粘膜移行部の移動)、治った後も赤く目立つことなどから、症状があるなら早めの手術をお勧めしています。

【図2:LERs advancement】

まずは垂直方向の弛緩を治す手術をすることが多いです。いくつかの手術法がありますが、当院では、LERs advancementという、緩んだLERを短縮して瞼板に縫合する手術を行っています【図2】。1週間、皮下出血のためにまぶたが腫れます。1週間後に抜糸をします。

多くの患者さんは1回の手術で治りますが、水平弛緩が強い患者さんは再発します。その場合は水平弛緩を治す手術をします。多くは外眥側の緩みのため、Lateral tarsal strip法という、下瞼板を外眥靭帯か骨膜に縫って引っ張る手術を行っています。こちらも、1週間まぶたが腫れること、抜糸があることは同じです。

いずれも日帰り、または1泊で行っており、最初の麻酔以外は痛みは基本的にありません。

睫毛乱生

睫毛が目に近い場所から、目にあたる方向に生えるために生じるものです。
正確には、睫毛が通常より目に近い瞼縁側から生えているものは睫毛重生といいますが、区別はあまり必要ないと思われます。睫毛の生える場所の問題です。
いろいろな原因で生じますが、まぶたの炎症(マイボーム腺炎、熱傷、Steven-Jonson症候群など)により毛根が異常な場所にできてしまうことが原因となることが多いです。

治療は、睫毛をその都度抜去するか、毛根の除去です。
睫毛は1~2か月で生えてくるため、抜去を選択した場合は、定期的に通院が必要です。
永久になくす場合は、睫毛根を除去する手術を行います。
本数が少ない場合は、外来で毛根を焼く睫毛焼灼術を行います。外来で数分でできますが、1回で治りきることは少なく、1回ごとに半分ほどずつ生えなくなり、繰り返し治療を行い完治を目指します。
本数が多い場合は、手術室で睫毛根切除術を行います。睫毛の生えている場所(上眼瞼か下眼瞼か)、量などにより、どのような切除の仕方をするかは変わります。最も難治なのが上眼瞼の睫毛内反を伴う睫毛乱生です。

当院ではどのようなタイプの睫毛のトラブルも治療いたします。睫毛でお困りの方はご相談ください。

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