病気と治療

眼科の病気と症状

下斜筋過動

下斜筋過動とは

「下斜筋過動」とは、斜視のひとつです。

目の周りには、6つの筋肉(外眼筋)があります【図1】
その筋肉が収縮することにより、目は動きますが、その外眼筋のひとつに下斜筋があります。
下斜筋は、目の内側の骨から始まり、眼球の下側を周り、目の外側に付着します。下斜筋が収縮すると、目は内上転します。
そのため、下斜筋は、斜め上内側を見た時に、一番働く筋肉です。

【図1】

その下斜筋の働きが生まれつき強い斜視を、下斜筋過動と言います。
下斜筋の働きが強いと、斜め上内側を見た時に、その目が上がりすぎるようになり(+1)、更に働きが強いと、内側を見ただけで目が上に上がります(+2)。
更に強いと、まっすぐ見ている時でも、目が上転してしまいます(+3)【図2】

【図2】

生まれつきある斜視の中で、日本人で一番多い斜視は間欠性外斜視ですが、下斜筋過動は間欠性外斜視に合併していることも多く(7~25%)、よくある斜視のひとつです。

目が上転してしまうと物が二重に見えるため、それを代償しようと、首を下斜筋過動がある目とは逆側に傾けることがあります【図3】

【図3:右目の下斜筋過動があると
左に頭位が傾く】

治療

治療は手術です。
首の傾きがなく、本人も困っていない場合は経過観察でよいですが、首の傾きがある場合や、+2以上(横を見ただけで目が上がる)の場合、手術をお勧めすることがあります。

下斜筋過動は、手術後の見え方に慣れるのに時間がかかる場合があります。
子供は脳が柔軟なため、斜視の術後の見え方にすぐに慣れますが、大人は脳の柔軟性が減ってきて、斜視の手術後、特に斜筋の術後に適応するのに時間がかかります。中には、仕事を1か月程休まないとならなくなった人もあります。
そのため、下斜筋過動の手術は、幼少時にお勧めすることが多いです。

手術について

下斜筋は目の奥の方にあるため、手術操作のために目を大きく傾ける必要があること、また子供のときに手術をすることが多いことから、基本的に全身麻酔で行います。
手術は、下斜筋の付着位置を後方にずらすことにより、下斜筋の働きを弱めます(下斜筋後転)。
正面を見た時にも上下斜視が出ているほどの場合、単純に後方にずらすだけでなく、付着部を目の前の方にずらす場合もあります(下斜筋前方移動)。

術後は他の斜視と同じように、縫合糸のために1週間は目がごろごろし、1か月ほど充血するため目薬を使用します。

「斜め上を見た時に、目の位置が気になる」、「首をよく同じ方向に傾けている」という場合、下斜筋過動などの斜視の可能性があるので、一度受診してみてください。

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