病気と治療

眼科の病気と症状

間欠性外斜視

間欠性外斜視とは

通常私たちは、両目で同じものを見ています。片方の目が別のところを向いている状態を「斜視」といいます。
いろいろな種類の斜視がありますが、その中で日本やアジアで最も多い斜視が、「間欠性外斜視」です。

間欠性とは「ときどき」という意味で、普段はまっすぐに見ていますが、ときどき片方の目が外にずれる斜視です【図1】

斜視がある場合、「目そのものに病気がないか」と「目の発達(視力や立体視)に影響していないか」を見る必要がありますが、間欠性外斜視は目の発達に影響しにくい、害の少ない斜視です

【図1】

間欠性外斜視は通常1歳以降に現れますが、稀に1歳未満で発症する場合もあり、その場合は精査が必要です。
また間欠性外斜視は、下斜筋過動や交代性上斜位といった、他の斜視を合併する場合があります。その場合は、合併した斜視に応じた対応が必要です。

症状

間欠性外斜視の症状は、「複視(物が二重に見える)」「眼精疲労(目の疲れ)」「両眼視機能の低下(物が立体的に見れない)」があります。
本来は外れている方が楽な状態であり、両目で見ている時は目の筋肉に力を入れて無理をしている状態です。そのため眼精疲労が生じます。子どもの時は目の力が強いためあまり目の疲れを感じませんが、高校生、大学生と成長するにつれ、眼精疲労を自覚しやすくなります。
また、斜視になっていない時は見え方は正常ですが、片方の目が外れている時は、物が二重に見えます(複視といいます)。複視の状態は脳が混乱するため、外れている目からの情報を脳が遮断してしまう場合があります(抑制といいます)。抑制は決してよい状態ではなく、物が立体的に見えず、斜視が恒常化(外れっぱなしになる)してくる要因となります。

治療

間欠性外斜視は、自然経過で23~75%が悪化してくると言われます。また、成人になると輻輳(寄り目にする力)が弱くなるため、より悪化してきます。自然に治ることは、基本はありません。

斜視の対応は、「プリズム眼鏡」という特殊な眼鏡と、手術があります。
成人では、プリズム眼鏡によって眼精疲労が改善する場合があります。小児には通常処方しませんが、近年小児にプリズム眼鏡を処方して、目の位置や立体視の改善に貢献したという報告も出てきており、今後斜視の悪化を抑制できるのか、両眼視機能を維持し続ける効果があるのか、検討が必要です。

通常は手術で治します。
間欠性外斜視の原因は未だはっきりしていないため、斜視の手術は「目の位置がまっすぐになった時にもっとも楽になるようにする」ことを目的として、目の筋肉の付着位置を動かす手術を行います。

目の周りには6つの筋肉が付いており、その筋肉の動きで目は動きます【図2】
その位置を下げれば(後転といいます)効果が弱まり、筋肉を短くすれば(短縮といいます)効果が強まります。

どちらの目のどの筋肉をどれだけ動かすかは、斜視の種類と角度によりますが、間欠性外斜視の場合は、通常外に向ける働きのある筋肉を後転して弱め、内に向ける働きのある筋肉を短縮して強める手術を行います。

【図2】

手術の絶対的な適応はありませんが、当院における基準を示します。

1. 整容面

斜視の手術目的で整容面はとても重要です。斜視があると自信が持てず、QOL(生活の質)の低下にもつながります。そのため、本人(もしくはご家族)が見た目が気になり治したい場合は、手術適応です

本人やご家族の治療希望がない場合は、下記から総合的に判断します。

2. コントロールの状態

どれだけの頻度で外れているかです。
「Newcastle Control Score」という、家や病院での外れる頻度を点数化したものがありますが、手術をした人は「家で50%以上外れている」「診察室で目が外れて戻らない」などの人が多く、家で50%以上外れている場合は、手術を検討してもよいと思われます

3. 斜視の角度

プリズム(Δで表します。おおよそ1°=2Δです)という単位を斜視の角度では用いますが、40Δ(約20°)以上では手術予後がやや不良と言われます。日本の多施設研究では、平均31.6Δで手術が行われていました。病院の検査で40Δほどあるようなら、手術を勧められることもあります。

4. 両眼視機能

斜視が悪化してくると、両目で見る力が弱まってきます。その場合、手術後の成績も不良となりやすいです。
病院で定期検査を受けて、両眼視機能が低下してきたら、手術を検討することもあります。

5. 年齢

4歳未満では手術が効きすぎて内斜視となった時に弱視が発症するリスクがあります。
また4~7歳だと手術の時に筋肉を動かす量が少なくて済む可能性がある、と言われています。
日本の多施設研究では、小児では6.7歳が平均でした。「小学校に上がる前後」がひとつの目安となります。
ただし、遅いから手遅れとなることはなく、青年期以降は手術後の戻り(斜視の再発)が少なくなるとも言われています。そのため、待てるなら大人になるまで待つのも選択肢です。
小児期にするなら小学校に上がる前後がひとつの目安、悪化がなければ大人になるまで待っても大丈夫、と覚えておきましょう。

6. 他の斜視の合併など

前述したように、間欠性外斜視は他の斜視を合併する場合があります。また、斜位近視という特殊な状態もあります。
合併した斜視などに応じて、手術適応は変わります。

手術について

手術は、小児では全身麻酔、大人では希望によって局所麻酔か全身麻酔で行います。
全身麻酔なら3日入院、局所麻酔なら2日入院です。
筋肉を触ると痛いので、斜視の手術は痛みがあります。そのため、「痛いのは絶対に嫌」と言う人は、全身麻酔で行います
局所麻酔で行う場合も、当院ではプレセデックスという鎮静剤を使用して行うため、手術中に寝てしまわれたり、痛みを感じない人もおられます。

手術当日、翌日は傷の痛みでずきずきします。痛み止めで対応します。術後1週間は目がごろごろします。縫合糸のためで、吸収される糸を使用しているため1週間辛抱です。1~2か月目が充血します。

手術で筋肉を動かす量は、斜視の角度によって決まっていますが、効果は個人差があります。予想以上に行き過ぎた場合は逆に内斜視となり、戻す手術が必要になることもあります。
また、手術後ちょうどよい目の位置でも、「戻り」が出てきて、外斜視に戻っていくこともあります。戻りはある程度の頻度で起こり、3年の経過で3割以上が15Δ以上の戻りが出たという報告や、10年の経過で20~60%の患者さんが追加の手術を必要とした、という報告もあります。
当院の追加手術の頻度は10%以下ですが、小児は4年ほど、成人でも1~2年ほど通院して、戻りが出てこないかを確認します

追加の手術をなるべく少なくするために、視力に左右差がある場合(不同視といいます)、眼鏡で矯正した方がよいです。
また、当院では術前や術後に、必要性や年齢により、視能訓練(両目でみる状態を維持する能力をつける訓練)を行っています。

親御さんが「子どもの目線がおかしい」と思ったときは、たいてい合ってますので、「斜視かもしれない」と思われたら、ひとまず一度検査にいらしてください。

ページトップ