体の血管には、心臓からの血液を各組織に送る動脈と、各組織から心臓まで血液を戻す静脈があります。
網膜にも動脈と静脈があり、網膜の動脈が閉塞する病気を、網膜動脈閉塞症といいます。
より根本の動脈(網膜中心動脈)が閉塞すれば、網膜中心動脈閉塞症【図1】、より末梢の動脈が閉塞すれば、網膜動脈分枝閉塞症といいます【図2】。
稀に、黄斑動脈という、網膜中心動脈以外の動脈が閉塞する場合もあります。
動脈硬化によって生じることが多いですが、より心臓に近い血管から血栓が飛んできて閉塞する場合もあります。
眼科の病気はいろいろありますが、網膜動脈閉塞症は重症で、後遺症を残す病気です。
「片眼が、突然、真っ暗」が、網膜中心動脈閉塞症の、典型的な症状です。
網膜動脈分枝閉塞症の場合は、閉塞した場所に応じた視野の障害を引き起こします。
それまでに、「数十分見えにくくなったけれど、徐々に戻って来た」などの兆候があることがあります。それは、閉塞しかけて開通した場合です。
ちなみに、急に見えにくくなった時、1分以内に改善するものは、動脈によるものよりも、目の表面の問題などを疑います。
血管が詰まりかけて起きる症状の場合、短くても数分以上の症状があります。
網膜は、血流が途絶えてから2時間ほどから損傷が始まり、6時間ほどで壊死します。
ですので、早期に血流が再開するかが極めて重要です。
しかし、残念ながら効果のある治療がまだないのが現状です。
といろいろな方法が世界中で試されてきましたが、どれも効果が乏しい、というのが現状です。
新しい治療薬も開発中ですが、劇的な効果、ということは望めないかもしれません。
それでも、何もしなければ見えないままなので、「片眼が、突然、真っ暗」となり、1時間経っても改善しない場合、夜間でも休日でも緊急で受診していただき、できるだけのことをさせていただきたいと思います。