物を見る上でとても大事な網膜には、たくさんの血管が走っています。
血管には、動脈と静脈があります。心臓から出た血液を全身に送るのが動脈、全身に供給された血液を心臓まで戻すのが静脈です。網膜にも動脈と静脈があります。ちなみに網膜の血管は、人体の中で唯一、体に傷をつけずに観察可能な血管です。健康診断などで、その人の動脈硬化の程度を調べることにも使われます。
その網膜の静脈が閉塞する病気を、網膜静脈閉塞症といいます。
網膜では、動脈と静脈が交互に走っており、一部交差しています。
動脈硬化が進むと、動脈が固くなり、交差している部位で静脈を押しつぶしてしまいます。それが網膜静脈閉塞症の原因であり、基本は動脈硬化で起こる病気です。稀に、動脈硬化のない若い人でも、血が固まりやすいなどの病気がある人には生じえます。
静脈が閉塞する場所により、網膜中心静脈閉塞症(central retinal vein occlusion : CRVO)と網膜静脈分枝閉塞症(branch retinal vein occlusion : BRVO)に分かれます。《写真1》
より根本で閉塞するのが網膜中心静脈閉塞症、より末梢で閉塞するのが網膜静脈分枝閉塞症であり、前者の方が重症です。閉塞した血管から出血するため、「眼底出血」と病院や健診で説明されることもありますが、出血が問題なのではなく、閉塞することが病態です。