Visual snow 症候群とは、Visual snowと呼ばれる、視野全体に無数のモノクロのドットが砂嵐のようにちらつくような症状を伴う病気です。患者さんは、ノイズを通してテレビを見ているように見えると言われます。
日本では「視界砂嵐症候群」や「小雪症候群」とも言われています。
海外ではこの病気の認知を広めるための活動団体がありますので、Visual snowがどのような症状が気になる方は、そのHPをご覧ください。
The Visual Snow Foundation – Raising awareness of Visual Snow Syndrome
Visual Snow Initiative
検査で異常が指摘できないため、昔はあまり話題にならず、患者さんが訴えても「心因性だろう」と受け取る医師も少なくありませんでした。また、片頭痛を合併することも多いため、片頭痛による見え方の異常とも考えられていました。
2014年にその概念が提唱されてから、一気に概念が広がり、研究も行われるようになりました。
性差は特にないと言われていますが、基本的には若年で発症し、半分の人は物心ついた時からVisual snowを自覚していると言われます。症状は365日ずっと続きます。突然発症も25%ほどと言われています。
MRIなどを用いた研究から、脳の誤作動が原因と考えられていますが、まだ原因ははっきりしていません。
検査で異常が見つからないため、患者さんの自覚症状のみでの診断になります。
診断基準は、3か月以上続く典型的なVisual snowの症状に加え、下記の4つのうち2つを満たすことです。
反復視、視覚保持 | 見ているものの後に残像が見えるなど |
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内視現象の亢進 | 眼球内のものが見えてとても気になること ひどい飛蚊症や、ブルーフィールド内視現象(網膜の血管内の白血球の動きが見え、青空などを見た時に、視野の中を小さな光が急速に動き回る現象)など |
羞明 | まぶしさ |
夜盲症 | 夜間の見えにくさ |
目の症状以外にも、片頭痛や耳鳴りがしたり、無気力や集中力の低下、いらいらや焦燥感などが生じることもあります。
また、調節不全(近くが見えない)や輻輳不全(寄り目ができない)などの目の異常も、半分ほどの人に生じると言われています。
研究は進んできていますが、原因がはっきりしていないため、まだ完治させる治療はありません。
患者さんは、「このまま失明するのでないか」という不安を感じますので、まずは、失明することは絶対にないことを説明します。
あとは、まぶしさを伴うことが多いため遮光眼鏡を試したり、マインドフルネス(今の自分の心・体をありのままに観察する瞑想)を利用した治療も一定の効果があると言われています。
片頭痛を伴うことも多いため、片頭痛の予防薬、β遮断薬、抗てんかん薬、抗うつ薬なども使用されますが、どれも効果がある人が中にはいる、というくらいの状況です。
まだ医学では原因が解明されない、そのために周囲の人から理解されない病気がいろいろとあります。Visual snow症候群はその代表であり、ケアが大切で、症状を周囲がわかってあげるだけでも苦しみは和らぎます。医師も、そうでない人も、「気のせい」「心が弱いから」「気にしすぎ」などとひとくくりにせず、その訴えには何かしらの原因があると考え、理解を示すことが大切だと知らされる疾患です。