病気と治療

眼科の病気と症状

角膜移植

角膜移植とは

角膜はいわゆる黒目のことで、眼球の一番外側にある透明な膜です【図1】
角膜の働きは、光を通し屈折させることと、異物の侵入を防ぐことです。角膜が透明だからこそ、光が目の奥に届き、物が見えます。その角膜が何かの理由で濁ると、乱視が生じたり視力が下がります。

【図1:角膜の構造】

角膜は約0.5mmのとても薄い膜ですが、全部で5層からなります。外側から順に、角膜上皮、ボウマン層、角膜実質、デスメ膜、角膜内皮です。この中で角膜実質がもっとも厚みがあります。
角膜上皮は傷ついても再生しますが、角膜実質は傷つくと濁りが残ることが多いです。また角膜内皮は水分の調節をして角膜を透明に保つ働きがありますが、再生することはなく、減少すると角膜を透明に保つことができなくなります水疱性角膜症といいます)。

濁った角膜実質、減少した角膜内皮の治療には、角膜移植が必要になります。
角膜実質の移植が、角膜全層移植であり、その改良版が深層層状角膜移植DALK:角膜内皮を残して移植)です。角膜内皮の移植が、角膜内皮移植DSAEK)であり、その改良版がデスメ膜内皮角膜移植DMEK:実質を含まない角膜内皮のみを移植)です。角膜移植の多くは角膜内皮の移植、1~2割が全層移植です。

角膜移植では、亡くなられた方から提供された貴重な角膜を使用します。日本にもアイバンクがあり、登録している方が亡くなられた時に提供していただきますが、需要に対して供給が少なく、緊急の治療が必要になります。当院では角膜を海外から輸入して、予定手術で行っています。

角膜全層移植

【図2:角膜全層移植】

角膜全層移植は、上皮、実質、内皮のすべてを取り換える手術であり、もっとも一般的な角膜移植です【図2】。昔は内皮が障害される水疱性角膜症に対しても行われていましたが、後述する角膜内皮移植の登場により、全層移植の頻度は少なくなり、実質の混濁が主の場合のみとなりました。
患者さんの角膜を8mmほど円状に切り抜き、そこに移植角膜を縫合します。その間、眼内と眼外が交通するため、眼圧が0に近くなります。患者さんの緊張で硝子体圧が高いと、眼内のものが外に脱出してきたり、最悪の場合多量の出血(駆逐性出血)を起こすため、全身麻酔で行うことも多いです。

患者さんの角膜内皮が正常な場合には、角膜上皮、実質だけを取り換える深層層状角膜移植(DALK)も行われます。角膜内皮を残すことで、術後に拒絶反応を減らせるメリットがあります。しかし、手術手技的に難しいこと、混濁が少し残る可能性があります。

入院期間は7~10日程です。移植角膜を縫合するため、どうしても乱視が生じます。乱視をなるべく軽減するため、術後に糸を調整したり抜糸することがあります。

移植には「拒絶反応」という合併症が起こり得ます。移植した角膜を体が異物と判断し、排除しようと炎症を起こすことです。
術後3か月頃から発症することが多いですが、1年以上経って発症することもあります。
角膜内に血管が入っていたり、過去に角膜移植をしている人は、拒絶反応の可能性が高くなります。早期治療が重要で、見えにくさ、充血などが生じたら、早期に受診するようにしましょう。

角膜内皮移植

【図3:角膜内皮移植(DSAEK)】

近年もっとも頻度の多い角膜移植です【図3】
前述のとおり、角膜内皮は角膜実質に栄養を送り、角膜実質の水分を前房に排出して、角膜の透明性を確保しています。そのため角膜内皮が傷むと角膜の水分を排出できなくなり、角膜がむくんで濁ります(水疱性角膜症)。角膜内皮は自然に再生・増加することがないため、内皮を移植する必要があります。

角膜内皮が傷む病気はいろいろありますが、最近は、緑内障の濾過手術後の症例が増えています。角膜内皮移植後の成績も元の疾患によって変わり、特に緑内障術後の症例は、3年ほどで角膜内皮が傷み再移植が必要になることが多いです。

1週間の入院で行います。手術の痛みはほとんどありません。
角膜内皮を接着させるために手術終了時に空気を前房内に入れ、術後1時間仰向けで過ごしていただきます。3時間後に眼圧上昇がないか診察をします。翌日以降は姿勢は自由になることが多いですが、移植角膜内皮の接着が不良の場合、再度空気を入れて姿勢制限が必要になることがあります。
術後は、内皮の接着が良好か、感染が生じないか、移植による拒絶反応が生じないかを診察します。また、20%程で黄斑浮腫が生じるため検査をします。拒絶反応は角膜内皮移植でも起こり得ますが、全層角膜移植よりは少ないです。
術後点眼は、1か月間は3種類を1日5回程していただき、徐々に減らしていきます。免疫を押さえるステロイド点眼は、生涯継続することが多いです。縫合糸は緩めば抜糸をします。

視力の回復は、移植角膜が透明になるか(角膜のむくみがとれるまでに2~3か月かかることもあります)、角膜以外に病気がないか、乱視の影響(特に全層角膜移植後は必発です)などによって変わりますが、だいたい3~6か月で落ち着くと言われています。

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