病気と治療

専門外来

網膜硝子体

医療従事者の方へ

当院では、どのような硝子体手術も行っております。
黄斑前膜などの硝子体手術は通常3日入院、ガスタンポナーデを行う手術は、7~10日間の入院でしていますが、日帰りで行うことも可能です。
網膜剥離、網膜下出血、外傷などの緊急手術もいつでも対応可能ですので、ご相談ください。

一般の方へ

「硝子体手術」とは、硝子体を含む、眼底の手術のことをさします。
その多くは、網膜の病気に対する手術です。【図1】

網膜
【図1】

目に入った光が網膜に到達して、光信号が電気信号に変わり、脳に伝えられることにより、物が見えます。

網膜は、物を見るうえでとても大切な組織であり、その中でも特に大切な中心の部分を、黄斑といいます。
その黄斑に病気が生じると、視力が下がったり、物が歪んで見えます。

※視力低下は、多くの部位の病気で生じますが、物が歪んで見えたときは、黄斑の異常にほぼ間違いありません。
月に1回は、片眼で物を見てチェックする習慣をつけ、歪んで見えたときは早期に眼科を受診するようにしてください。

その黄斑、網膜には多くの病気があり、それは視力に直結します。
網膜、黄斑の病気には、手術で治る病気もあれば、手術の適応とならない病気もあります。
手術で改善が期待できる病気に対して、行う手術を、硝子体手術と言います。【図2】

網膜は厚さ250μmという、1mmの4分の1ほどの厚さしかなく、眼科の手術の中でも、最も繊細な手技が必要な手術の一つです。昔は、合併症も多かった手術ですが、医学、機器の進歩により、だいぶ安全に行える手術となりました。

《硝子体手術》
硝子体手術
【図2】

網膜の病気はたくさんありますが、その中で、硝子体手術が必要となる代表的な4つの病気を紹介します。

黄斑前膜

網膜の病気の中で、比較的頻度の多い病気です。
「網膜前膜」「網膜上膜」「黄斑上膜」とも言われますが、すべて同じ病気です。

黄斑に薄い膜が張ってくる病気で【図3】、軽度な人を含めると、8%程の人にあると言われています。
前膜が軽度で網膜の形態がほぼ正常なうちは、症状もなく、経過観察でよいですが、前膜が悪化し厚くなってくると、網膜の形態も変形して、視力が下がったり、歪んで見えたりします。そうすると、手術で取ることとなります。

《黄斑前膜のOCT画像》
正常例
黄斑前膜
【図3】

一度形態が変化した黄斑は、黄斑前膜を除去した後も正常な形態には戻らないため、歪みや視力低下はある程度残ります。
ですので、悪化してからの手術ほど後遺症が強く残る病気と言えますが、症状がまったくない早期に手術を行うと、4割ほどの人に変視が生じるという当院の報告もあり、どの段階で手術を行うかは、医師とよく相談して決めるとよいでしょう。

網膜剥離

網膜剥離にもいくつかの種類がありますが、手術が必要となるのは、「裂孔原性網膜剥離」です。
網膜に穴が開き(網膜裂孔)、その穴から網膜の裏に水が回り、網膜が剥がれてくる(剥離)病気です。
1万人に1人の頻度で発症すると言われています。【図4】

網膜剥離
【図4】

剥がれた網膜は機能しなくなるため、その部位が見えにくくなり、放置すると網膜全部が剥がれ、失明します。

よく、「なぜ網膜に穴が開いたのか」と聞かれますが、日常生活などはほぼ無関係で(目を強くぶつけた、などは別です)、もともと網膜に穴が開きやすい目をお持ちの方に、穴が開くことがほとんどです。
ですので、網膜が薄く穴が開きやすい部位(格子状変性といいます)がある方は、予防としてレーザーで固める手術を行うこともあります。

網膜剥離の手術は、網膜裂孔の場所を網膜に接着させ塞ぐ手術となりますが、眼の外側から行う手術(網膜復位術)と、眼の内側から行う手術(硝子体手術)の、大きく2種類あります。【図5】

網膜復位術
硝子体手術
【図5】

眼の外側から行う網膜復位術は、比較的痛みを伴いやすく、傷も大きくなりますが、目の中をほぼ触らないため、合併症が比較的少ない手術と言えます。ただし、裂孔の場所によっては行えません。
眼の内側から行う硝子体手術は、痛みは少なく、時間も比較的短く行え、どのような網膜裂孔に対しても対応できますが、目の中を触るため、白内障が進行してしまうこと、網膜裂孔が接着するまで1週間ほどかかるため、その間ガスにより網膜を押さえる必要があり、1週間ほど姿勢の制限があることなどのデメリットがあります。そのため、白内障が軽度ながら出てくる年齢(だいたい40~50歳以上)の場合は、白内障手術も同時に行うことが多いです。
それぞれメリットデメリットがありますが、若年者は網膜復位術、40~50歳以上の方は硝子体手術を行うことが多いと言えるでしょう。

網膜剥離の後遺症は、「中心窩が剥離しているかどうか」で大きく変わります。中心窩とは、黄斑の中でも特に大事な中心の部分で、視力、変視に大きく関わります。中心窩が剥がれていなければ、おおむね元と同じ見え方に戻ることが可能です。
そのため、網膜剥離の手術は緊急で行われます。後遺症をなるべく少なくするためにも、見え方の異常があれば早期に眼科を受診し、手術を勧められたら、仕事を工面してでも、早急に手術を受けることが大切です。

なお、網膜剥離に至る前に、網膜裂孔が出来た段階で治療ができれば、入院しての手術は不要です。
何も症状がなく網膜裂孔が生じる場合もありますが、「飛蚊症(目の中に影が動いて見える。目を動かすとついてくる)」「光視症(チカチカ光って見えるようになる)」の症状を伴うこともあります。新たな飛蚊症、光視症が出現した時は、早めに眼科で検査を受けるようにしましょう。

糖尿病網膜症

こちらをご覧ください<糖尿病網膜症>

網膜下出血

網膜の裏側に出血がたまる状態です。【図6】

加齢黄斑変性や網膜細動脈瘤の破裂などで生じます。
網膜の前や、硝子体中の出血は、基本は手術で除去できますし、視力も元に戻ることが多いですが、網膜の下の出血は、網膜を傷め、一度傷んだ網膜は回復することはないため、大きな後遺症を残します。また、1~2週間程放置すると、除去することが不可能となるため、眼科の疾患の中では重篤で、早急な手術が必要な病気です。

治療は、網膜の下に血栓溶解剤を注入し、ガスを眼内に入れることにより、出血を大事な黄斑部から移動させる手術をします。
網膜剥離と同様、術後1週間ほどの体位制限があることと、それでも後遺症は強く残る、治療の難しい病気です。

《網膜下出血》
網膜下出血
【図6】
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