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2025年12月16日(火)

令和7年11月15日(土)アラカンカフェが開催されました

【画像】令和7年11月15日(土)アラカンカフェが開催されました

令和7年11月15日土曜日 午後4時~5時
真生会富山病院 会議室で刀塚医師の免疫システムと自己免疫疾患に関する講演を開催しました。

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日本の免疫学研究は、明治時代からの感染症研究の伝統を基盤に、世界トップレベルの成果を上げ続けています。本庶佑先生と坂口志文先生に代表される京都大学を中心とした研究者たちは、日本人特有の丁寧さと粘り強さを武器に、サイトカインの発見や制御性T細胞の解明など、免疫学の発展に大きく貢献してきました。特に坂口先生の30年以上にわたる一貫した研究姿勢は、基礎研究における継続性の重要性を示す好例といえます。これらの研究成果は、がん治療や自己免疫疾患の治療など、医療の進歩に直接つながる重要な発見となっています。


以下、講座の詳細をまとめましたのでご覧ください。

【画像】熱弁を振るう刀塚医師
熱弁を振るう刀塚医師

【画像】免疫とは、ウイルスや細菌から体を守る防御システムであり、病から免れるという意味を持つ生体防御機能です。免疫は自己に対しては寛容で攻撃せず、非自己(異物)に対しては排除しようとする性質を持ちます。しかし、免疫が暴走すると自分の体を攻撃してしまい、関節リウマチなどの自己免疫疾患が発症する可能性があります。免疫システムは脳や腸管システムと同様に「スーパーシステム」と呼ばれ、アバウトでありながら最終的には精密に制御される特徴があります。免疫が過剰に働くとアレルギーや自己免疫疾患になり、弱くなると感染症に対して寛容になるという微妙なバランスで成り立ちます。1950年から2000年の間に感染症は減少しましたが、1型糖尿病、クローン病、多発性硬化症などの自己免疫疾患は顕著に増加しました。
免疫とは、ウイルスや細菌から体を守る防御システムであり、病から免れるという意味を持つ生体防御機能です。免疫は自己に対しては寛容で攻撃せず、非自己(異物)に対しては排除しようとする性質を持ちます。しかし、免疫が暴走すると自分の体を攻撃してしまい、関節リウマチなどの自己免疫疾患が発症する可能性があります。
免疫システムは脳や腸管システムと同様に「スーパーシステム」と呼ばれ、アバウトでありながら最終的には精密に制御される特徴があります。免疫が過剰に働くとアレルギーや自己免疫疾患になり、弱くなると感染症に対して寛容になるという微妙なバランスで成り立ちます。
1950年から2000年の間に感染症は減少しましたが、1型糖尿病、クローン病、多発性硬化症などの自己免疫疾患は顕著に増加しました。


【画像】胸腺は心臓の上、胸骨の裏あたりに位置する臓器で、自己と非自己を見分けるメカニズムに重要な役割を果たすことが1960年に発見されました。マウスの胸腺を小さい時に摘出すると免疫が極端に弱くなり、臓器移植の拒絶反応も起きなくなることが実験で明らかになりました。胸腺は子供の頃に大きく、成人になると萎縮して見えなくなりますが、リンパ球の仕分けという重要な教育機能を担っています。胸腺では自分の体に反応するT細胞は排除され、ウイルスや細菌を攻撃するT細胞のみが血液中に送り出される仕組みがあります。胸腺で作られ教育されるリンパ球をT細胞(チムス由来)と名付け、この発見が後の免疫学研究の基礎となりました。子供の頃は胸腺が大きくナイーブなT細胞の仕分けが活発ですが、成人後は仕分けが完了して胸腺は退縮します。
胸腺は心臓の上、胸骨の裏あたりに位置する臓器で、自己と非自己を見分けるメカニズムに重要な役割を果たすことが1960年に発見されました。マウスの胸腺を小さい時に摘出すると免疫が極端に弱くなり、臓器移植の拒絶反応も起きなくなることが実験で明らかになりました。
胸腺は子供の頃に大きく、成人になると萎縮して見えなくなりますが、リンパ球の仕分けという重要な教育機能を担っています。胸腺では自分の体に反応するT細胞は排除され、ウイルスや細菌を攻撃するT細胞のみが血液中に送り出される仕組みがあります。胸腺で作られ教育されるリンパ球をT細胞(チムス由来)と名付け、この発見が後の免疫学研究の基礎となりました。
子供の頃は胸腺が大きくナイーブなT細胞の仕分けが活発ですが、成人後は仕分けが完了して胸腺は退縮します。

【画像】坂口志文先生は長浜北高校出身で、1970年に一浪後京大医学部に合格しました。現役時は東大入試中止の影響で不合格となっていました。坂口先生は1969年の西塚康明先生の論文に強い興味を持ち、生後2~4日のマウスから胸腺を摘出すると卵巣炎が起きる自己免疫疾患の研究に着目しました。京大医学部免疫教室で研究を開始した後、愛知県がんセンターの西塚先生のもとに国内留学して研究を深めました。そこでCD5陽性度の低い細胞をヌードマウスに移植すると炎症が起き、CD5強陽性細胞を加えると炎症が抑制される現象を発見しました。1970年代にサプレッサーT細胞の存在が提唱されましたが証明できず否定され、多田富雄先生は失意のうちに退官するという背景がありました。しかし坂口先生は免疫を抑制する細胞の存在を信じ続け、サプレッサーT細胞との誤解を避けるため「制御性T細胞」と名称を変更しました。
坂口志文先生は長浜北高校出身で、1970年に一浪後京大医学部に合格しました。現役時は東大入試中止の影響で不合格となっていました。坂口先生は1969年の西塚康明先生の論文に強い興味を持ち、生後2~4日のマウスから胸腺を摘出すると卵巣炎が起きる自己免疫疾患の研究に着目しました。
京大医学部免疫教室で研究を開始した後、愛知県がんセンターの西塚先生のもとに国内留学して研究を深めました。そこでCD5陽性度の低い細胞をヌードマウスに移植すると炎症が起き、CD5強陽性細胞を加えると炎症が抑制される現象を発見しました。
1970年代にサプレッサーT細胞の存在が提唱されましたが証明できず否定され、多田富雄先生は失意のうちに退官するという背景がありました。しかし坂口先生は免疫を抑制する細胞の存在を信じ続け、サプレッサーT細胞との誤解を避けるため「制御性T細胞」と名称を変更しました。


【画像】1995年にCD25をマーカーとする制御性T細胞の存在を示す重要論文を発表しましたが、サイエンスやネイチャーには掲載拒否されました。しかし、アメリカ免疫学会の大物シュバック氏が論文の正しさを認め、ジャーナル・オブ・イミュノロジーに掲載されて日の目を見ることが可能になりました。CD4陽性細胞のみを投与すると自己免疫疾患が発症しますが、CD25陽性の制御性T細胞を加えると病気が治るという実験で証明しました。10年間のアメリカ滞在後、1998年に京大再生医学研究所(旧結核研究所)の教授として帰国し研究を継続しました。2001年にブランコ氏とラムズデール氏がスカーフィーマウスの原因遺伝子としてFOXP3を発見し、人間のIPEX症候群との関連も明らかにしました。坂口先生はFOXP3遺伝子が制御性T細胞のマーカーであるCD25陽性細胞にのみ発現することを発見し、普通のT細胞にFOXP3を導入すると制御性T細胞に変化することをサイエンス誌に発表して遺伝子レベルでの証明に成功しました。
1995年にCD25をマーカーとする制御性T細胞の存在を示す重要論文を発表しましたが、サイエンスやネイチャーには掲載拒否されました。しかし、アメリカ免疫学会の大物シュバック氏が論文の正しさを認め、ジャーナル・オブ・イミュノロジーに掲載されて日の目を見ることが可能になりました。CD4陽性細胞のみを投与すると自己免疫疾患が発症しますが、CD25陽性の制御性T細胞を加えると病気が治るという実験で証明しました。
10年間のアメリカ滞在後、1998年に京大再生医学研究所(旧結核研究所)の教授として帰国し研究を継続しました。2001年にブランコ氏とラムズデール氏がスカーフィーマウスの原因遺伝子としてFOXP3を発見し、人間のIPEX症候群との関連も明らかにしました。坂口先生はFOXP3遺伝子が制御性T細胞のマーカーであるCD25陽性細胞にのみ発現することを発見し、普通のT細胞にFOXP3を導入すると制御性T細胞に変化することをサイエンス誌に発表して遺伝子レベルでの証明に成功しました。

【画像】制御性T細胞は免疫細胞の過剰な攻撃を制御する役割を持ち、抑制系サイトカインを分泌して他のT細胞に過剰反応をやめさせる信号を送ります。自己免疫疾患の治療において、制御性T細胞を用いることで免疫抑制剤よりも選択的に暴走した免疫のみを抑え、感染症への抵抗力を保つことが期待されます。また、アレルギー疾患(花粉症など)の抑制や、臓器移植における拒絶反応の制御への応用も期待されています。一方、がん治療においては逆のアプローチが必要です。がん細胞は制御性T細胞を利用して免疫攻撃を回避しているため、制御性T細胞を抑制することでがん免疫療法(オプジーボなど)の効果を高めることが期待されます。しかし、臨床応用にはまだ多くのハードルがあり、制御性T細胞の投与量や条件、各疾患に対する特異性など解明すべき課題が残されています。坂口先生はベンチャー企業を設立して研究を継続しており、今回のノーベル賞受賞は基礎研究の成果が認められたものです。
制御性T細胞は免疫細胞の過剰な攻撃を制御する役割を持ち、抑制系サイトカインを分泌して他のT細胞に過剰反応をやめさせる信号を送ります。自己免疫疾患の治療において、制御性T細胞を用いることで免疫抑制剤よりも選択的に暴走した免疫のみを抑え、感染症への抵抗力を保つことが期待されます。また、アレルギー疾患(花粉症など)の抑制や、臓器移植における拒絶反応の制御への応用も期待されています。
一方、がん治療においては逆のアプローチが必要です。がん細胞は制御性T細胞を利用して免疫攻撃を回避しているため、制御性T細胞を抑制することでがん免疫療法(オプジーボなど)の効果を高めることが期待されます。
しかし、臨床応用にはまだ多くのハードルがあり、制御性T細胞の投与量や条件、各疾患に対する特異性など解明すべき課題が残されています。坂口先生はベンチャー企業を設立して研究を継続しており、今回のノーベル賞受賞は基礎研究の成果が認められたものです。


【画像】本庶佑先生と坂口志文先生の両名とも京都大学出身で、日本の免疫学研究は世界的に高い評価を受けています。サイトカインの発見はほとんど日本人研究者によるもので、明治時代の北里柴三郎や志賀潔などの感染症研究の伝統が基盤となっています。日本人研究者の丁寧な仕事ぶり、細かい手作業への適性、粘り強さが免疫学研究での成功要因として挙げられます。坂口先生は30年以上一つの研究テーマに取り組み続け、その粘り強さが成果につながった好例です。
本庶佑先生と坂口志文先生の両名とも京都大学出身で、日本の免疫学研究は世界的に高い評価を受けています。サイトカインの発見はほとんど日本人研究者によるもので、明治時代の北里柴三郎や志賀潔などの感染症研究の伝統が基盤となっています。
日本人研究者の丁寧な仕事ぶり、細かい手作業への適性、粘り強さが免疫学研究での成功要因として挙げられます。坂口先生は30年以上一つの研究テーマに取り組み続け、その粘り強さが成果につながった好例です。

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