医療者に求められること
「医療は社会的共通資本である」と言われます。
社会的共通資本とは、ある一つの国、あるいは社会、そこに住むすべての人たちが、人間的尊厳を守り、市民的権利を最大限に享受できる、魅力ある社会をつくり、それを持続的に維持していくために非常に重要な社会的装置のことを言います。
具体的には、自然環境、社会的インフラストラクチャー、制度資本の三つです。自然環境とは山、川、森、湖、海それから大地など。
二つ目の社会的インフラストラクチャーとは道路、鉄道、上下水道、電信電話、郵便といった、社会が円滑に機能していくために重要な役割を果たすインフラストラクチャーのことです。
そして、三つ目の制度資本を代表するものが医療と教育です。
社会的共通資本という考え方には、社会にとって、いちばん大切なものを社会全体の共通の財産として、皆で協力して維持し守っていこうという考え方が、その根底にあります。
ですから、医療は社会から守られなければならない大切な財産なのです。
しかし、医療が守られるべき価値のある社会資本たるには、医療者である私達がクリアしなければならない前提条件があると言われています。
それが次の4つです。
・医療者は職業的倫理を明白な形で維持すること
・医療者は専門家としての科学的見地、技術的習熟をもつこと
・医療者はすぐれた人間的資質の持ち主であること
・提供する医療に対して常にきびしいチェックが専門的ならびに社会的になされていること
この前提条件をクリアしてこそ、誰もが安心して命を預けられる、社会的共通資本としての医療となりうるということです。それを担う者として、大きな責任を感じると共に、怠りなく研鑽しなければと思います。