

本当に大切なもの
前回の院長通信では、医療者が患者に対し、上から目線に
なりやすい理由の一つとして、与える立場にあるからだと
考察しました。与える立場にあると自分の方が偉いような
錯覚に陥るからです。
今回は二つ目の理由として、目に見えるもので優劣を判断
する思考回路について説明します。
私たちは、小さい頃から、競争の中で生きてきました。
「できる」か「できない」かという競争です。
九九が言えるか言えないか
50メートルを泳げるか泳げないか
良い点数を取れるか取れないか
できる人が優れており、できない人が劣っているという
篩(ふるい)にかけられて生きているのです。
そんな基準に染まっていると、自分で自分のことができなく
なってしまった人、家族の顔も分からなくなってしまった人
を簡単に篩にかけてしまいます。
しかし、本当に大切なものは目に見えません。
その人が社会にどれだけ貢献して来られたか
その人がどれだけ懸命に生きて来られたか
その人がどれだけ優しい心の持ち主か
目に見えない本当に大切なものを心で見れる人になりましょう。
まずは、目に見えるもので判断しようとする自分の篩を否定し、
その方の人生に関心を寄せることから始めましょう。
「患者がどんな病気にかかっているかよりも、その病気に
かかっている患者がどんな人かを知る方がはるかに大切だ。」
(ウイリアム・オスラー)