急に現れ(急性)
低い周波数の音だけが(低音障害型)
聞こえにくくなる(感音難聴)病気です。
ある日、突然、このような耳の症状が現れます。軽いふらつきが出ることもありますが、ほとんどは上に書いた耳の症状です。よく似た病気に、突発性難聴、メニエール病があります。突発性難聴に比べ、急性低音障害型感音難聴は治りやすいのですが、長引いたり、再発を繰り返すことがありますので、自覚症状がなくなったから治ったと考え、治療を中断しないようご注意ください。
睡眠不足、ストレス、体の慢性的な疲れ、風邪などが原因で起こります。若い人に多い病気と言われていましたが、最近、増えているのが50代、60代、あるいはそれ以上の高齢の方の急性低音障害型感音難聴です。年齢に伴う動脈硬化、体力の低下が関係しているのではと考えています。
大まかには内耳(蝸牛)のリンパ液の流れが悪くなる場合と内耳(蝸牛)の血液の流れが悪くなる場合の2種類です。
内耳(蝸牛)のリンパ液の流れが滞る場合
睡眠不足、ストレス、体の慢性的な疲れが蓄積すると内耳にリンパ液を溜めるホルモンが過剰に分泌され、内耳がリンパ液でむくんだ状態になります。そのむくみが原因で難聴となります。内耳(蝸牛)の血液の流れが悪くなる場合
動脈硬化、低血圧、年齢に伴う体力低下などを原因として内耳の血液の流れが悪くなると内耳の音を聞く細胞の働きが悪くなり、難聴が起こります。間違えやすいその他の病気
耳が詰まるような症状で、低い周波数の音(低音)が聞こえにくくなる病気には、他の病気もあります。耳管狭窄症や耳管開放症という耳管の病気は、その中でも比較的多く、ヘッドホンを付けて行う簡易な聴力検査だけではなく、耳の後ろに端子を付けて測る骨導聴力や鼓膜の奥の圧力を測定する検査、耳管の働きを確認する検査も行わないと正しい診断はできない場合が多いです。睡眠不足、ストレス、体の慢性的な疲れが原因で起こることが最も多いので、心当たりがある場合は、普段よりもゆっくり休むことが基本です。
治療は原因によって異なります。
内耳(蝸牛)のリンパ液の流れが滞っている場合
急性の軽度の炎症が原因でリンパの流れが悪くなっている場合などはステロイド剤が効果を発揮します。溜まりすぎた内耳のリンパ液を排泄する薬としては利尿剤がよく用いられます。五苓散はリンパ液を溜まりすぎないように体を整える働きのある代表的漢方薬です。内耳(蝸牛)の血液の流れが悪くなっている場合
動脈硬化が関係しているような場合、低血圧などの場合は血液の流れをよくする薬も有効ですが、定期的な有酸素運動を心がけた生活習慣が大切です。食事、運動、睡眠は健康の基本ですので、改善すべき点があればぜひ取り組んでいただきたいと思います。年齢に伴う体力低下などを原因として内耳の血液の流れが悪くなっている場合や1ヶ月も薬を飲んで治療しているが治らないという難治性の方には人参養栄湯という漢方薬が効果を発揮することがあります。リンパ液の流れが滞っている場合は10日か14日程で治ることがほとんどですが、血液の流れが悪くなっている場合は1ヶ月、2ヶ月など比較的長い期間が必要になります。治療の途中で聴力が変動する方は、1ヶ月から数ヶ月かかると考え、気長に取り組んでください。1年以上、治らなくても、ある漢方薬で完全に治った例もあります。
経過の途中でめまいが出てきた場合は、メニエール病という内耳の慢性病の初期のことがあり、医師の指示に従っての内服に加え、生活習慣の改善が必須です。いったん治ってもまたなるのではという心配もあるかと思いますが、この病気は症状がなしに進行することはなく、必ず耳に症状が現れますので、症状が出てくればぜひすぐに耳鼻咽喉科を受診してください。
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