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消火器センターだより

Vol.6 夏号 (発行年月)令和7年7月

生魚にひそむ危険 ― アニサキス症にご注意を!

買ってきたキトキトの刺身に舌鼓を打ちつつ、冷えたビールをキューっと飲むのが晩酌の定番。ところが、深夜に胃の激痛が始まり七転八倒するとなると、それは胃アニサキス症かもしれません。

アニサキス症は、生の魚やイカに寄生する線虫「アニサキス」の幼虫を食べることで感染する病気です。感染すると、数時間以内に激しい腹痛や吐き気が起こることがあり、時に救急外来を受診するほどの強い痛みに襲われます。

アニサキスはクジラやイルカの胃の中で成虫になります。そこではアニサキス成虫にとって居心地よく、クジラやイルカも無症状です。成虫の写真はネット検索で見ることができます。勇気のある方はどうぞ。

卵は糞と共に海中に排出され、孵化後にオキアミが摂取し、食物連鎖を経てサバやイカ、アジ、カツオ、サンマなど魚介類に寄生します。ところがクジラやイルカが食べる前にヒトが横取りして生食すると、アニサキス幼虫が人間の胃に感染。本来住めない環境なので、アニサキスも人も苦しみます。

日本では刺身や寿司などの生食文化があるため、アニサキス症は特に多く、今や最も多い食中毒の原因の一つとなっています。
特に多いのは、魚を食べた2〜8時間後に起こる「胃アニサキス症」です。再感染の場合には、じんましんやアナフィラキシーといったアレルギー症状を引き起こすこともあります。腸に感染する「腸アニサキス症」はまれですが、腸閉塞から手術になることもあります。名優、森繁久弥さんは、サバの押しずし(バッテラ)を食べて腸アニサキス症となり、開腹手術をしたと報道されました。

胃アニサキス症の治療には特効薬はなく、内視鏡で虫体を取り除くことが最も効果的です。正しく診断されれば、手術は不要で、症状も速やかに改善します。アレルギーをおさえる薬や鎮痛剤が使われることもあります。予防のためには、「−20℃で24時間以上の冷凍」または「60℃で1分以上の加熱」が有効です。

魚を生で食べる際には、信頼できるお店で購入し、可能であれば目視で白い糸のような虫を確認し取り除いてください。

内視鏡で、胃粘膜に刺⼊しているアニサキス発⾒。内視鏡で、胃粘膜に刺⼊しているアニサキス発⾒。

捕まえて引っ張っています。その後摘出されました。捕まえて引っ張っています。その後摘出されました。

Q&A

Q 新鮮な魚なら大丈夫ですよね。 A 捕獲後、船上で内臓を除いて目視で確認して食べればリスクは少ないでしょう。しかし、数時間で内臓から筋肉に移行するので、港に上がってからではもはや大丈夫とは言えません。

Q 酢で絞めたらアニサキスも死にますよね? A 酢でもアニサキスは死にません。人の胃酸(塩酸)にさらされてもしばらくは暴れているのですから。また富山県民の好きな昆布じめでも死にません。

Q ます寿司にはさすがにいないですよね? A オキアミを食べる天然マスにはアニサキス幼虫が寄生しています。一方養殖マスには、ほとんど寄生していません。信頼できるお店のます寿司は問題ありません。

Q タラ汁はだいじょうぶでしょうか? A タラ汁は熱が通っているので問題ありません。タラにもアニサキスが寄生しますので、刺身には気をつけなければなりません。

Q ホタルイカにはアニサキスはいないと聞きました。 A アニサキスはほとんどいませんが、内臓には旋尾線虫という寄生虫の幼虫がいます。生きているままの踊り食いなどもっての外。腸閉塞になったり、幼虫移行症として体内に侵入し皮膚の中をはい回ることがあります。ホタルイカの加熱、冷凍で死滅します。

アニサキス症は予防が可能な病気です。正しい知識と少しの注意で、安全に美味しく食を楽しみましょう!

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