腱板断裂は、その断裂サイズにより、大まかに以下のように分類されます。
腱板の修復方法として、一般に単層法、重層法、スーチャーブリッジ法があり、変遷してきました。我々は、ほとんどの症例でテープ付きアンカーを用いた、スーチャーブリッジ法を行っています。
スーチャーブリッジ法は、左記の図のように内外側をスーチャーアンカーを用いて面で圧着することによって、良好な修復を得、これをテープを用い行うことでさらに強固で、また術後疼痛の軽減にも有効です。
肩関節鏡写真:腱板完全断裂に対する、テープを用いたスーチャーブリッジ法
JOSKAS (日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会雑誌)Vol38:14-15, 2013 太田 悟
肩関節 ;42 (2018) No.3 p. 686-689 太田 悟,駒井 理
一次修復が困難な腱板大・広範囲断裂に対して腱移行、人工骨頭等様々な術式が報告されていますが、確立されたものはありません。当施設では、大腿筋膜を移植腱(グラフト)として用いた再建術を約15年前から行ない、多くの症例の集積により、患者さんにとって最適な術式を選択することができ、良好な成績を得ることができました。
大阪医大の三幡先生が2010年開発された、国内発の術式です。
グラフトを肩甲骨の肩甲上結節と上腕骨の大結節を橋渡しするように固定し、肩の求心位を得るのに最も重要な上方関節包を再建する手術です。この手術が開発されるまでは、当院ではいわゆるパッチ手術を行ってきましたが、再断裂率、手術後の可動域、筋力などにおいて、ASCRではより改善が見られ、当院では大・広範囲腱板断裂の多くの患者さんにこの術式を適応としています。この上方関節包再建術は、関節温存手術であり特に、スポーツや労働を続けて行う、70代までの方には有効であると考えます。80以上の高齢の方や、関節症性変化が進んだ方では、再断裂のリスクが上がることから、リバース型人工肩関節置換術をお勧めすることがあります。
更に、当施設では棘下筋腱など、部分修復が可能なものは、可能な限り修復したうえで、ASCRを行っています。これによってより挙上角度の改善が得られています。
右肩腱板大断裂に対し部分修復+ASCRを施行しました。手術後、3ヶ月で元の軽作業労働に復帰されました。
肩関節鏡写真
グラフトを関節内に誘導します。肩関節鏡写真
[〇] 棘下筋腱 部分修復を行いました。術前 大断裂
術後6ヶ月
中部整災誌 ;57: 819-820 2014 太田 悟,兼氏 歩
JOSKAS (日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会雑誌)
Vol41:No.3,616-621,2016
太田 悟
中部整災誌;2017;60: 565-566 太田 悟,兼氏 歩
Archives of Orthopaedic and Trauma Surgery (2020) 140:1319-1325
Satoru Ohta,Osamu Komai,Yuuki Onoch
https://doi.org/10.1007/s00402-019-03316-2
JOSKAS (日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会雑誌)
Vol45:No.3,607-613,2020
太田 悟
更に、断裂後の残存腱板が大結節を1cm内側化し届くようであれば、私たちは国分らが加発した、graft augmentation(GA)を改良し行っています。
術前
術後6ヶ月
術後3ヶ月で介護の仕事に復帰しました。 MRIにて修復状態は良好です。Copyright Shinseikai-toyama hospital All Rights Reserved.