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腱板断裂

腱板断裂は、その断裂サイズにより、大まかに以下のように分類されます。

断裂サイズ

腱板の修復方法として、一般に単層法、重層法、スーチャーブリッジ法があり、変遷してきました。我々は、ほとんどの症例でテープ付きアンカーを用いた、スーチャーブリッジ法を行っています。
スーチャーブリッジ法は、左記の図のように内外側をスーチャーアンカーを用いて面で圧着することによって、良好な修復を得、これをテープを用い行うことでさらに強固で、また術後疼痛の軽減にも有効です。


肩関節鏡写真:腱板完全断裂に対する、テープを用いたスーチャーブリッジ法


参照


大・広範囲断裂に対する治療

一次修復が困難な腱板大・広範囲断裂に対して腱移行、人工骨頭等様々な術式が報告されていますが、確立されたものはありません。当施設では、大腿筋膜を移植腱(グラフト)として用いた再建術を約15年前から行ない、多くの症例の集積により、患者さんにとって最適な術式を選択することができ、良好な成績を得ることができました。

上方関節包再建術 (ASCR: Arthroscopic Superior Capsular Reconstruction)

大阪医大の三幡先生が2010年開発された、国内発の術式です。
グラフトを肩甲骨の肩甲上結節と上腕骨の大結節を橋渡しするように固定し、肩の求心位を得るのに最も重要な上方関節包を再建する手術です。この手術が開発されるまでは、当院ではいわゆるパッチ手術を行ってきましたが、再断裂率、手術後の可動域、筋力などにおいて、ASCRではより改善が見られ、当院では大・広範囲腱板断裂の多くの患者さんにこの術式を適応としています。この上方関節包再建術は、関節温存手術であり特に、スポーツや労働を続けて行う、70代までの方には有効であると考えます。80以上の高齢の方や、関節症性変化が進んだ方では、再断裂のリスクが上がることから、リバース型人工肩関節置換術をお勧めすることがあります。

(三幡ら、肩関節2010)
(Mihata et.al. Arthroscopy 2013 Mar;29(3):459-70)
採取したグラフト(長径6cm横径3cm程度)を形成して、10㏄の注射器シリンジを使って、関節内に誘導します。
外側は、テープ付きアンカーにて、スーチャーブリッジ法を行います。

更に、当施設では棘下筋腱など、部分修復が可能なものは、可能な限り修復したうえで、ASCRを行っています。これによってより挙上角度の改善が得られています。


症例 60代男性

右肩腱板大断裂に対し部分修復+ASCRを施行しました。手術後、3ヶ月で元の軽作業労働に復帰されました。

肩関節鏡写真

肩関節鏡写真

グラフトを関節内に誘導します。
棘下筋腱の部分修復も可能と判断し、部分修復後、ASCRを追加で行っています。
肩関節鏡写真

肩関節鏡写真

[〇] 棘下筋腱 部分修復を行いました。
[△] グラフト
術前 大断裂

術前 大断裂

術後6ヶ月

術後6ヶ月


参照


GA: Graft Augmentation

更に、断裂後の残存腱板が大結節を1cm内側化し届くようであれば、私たちは国分らが加発した、graft augmentation(GA)を改良し行っています。

(Kokubu et al,Arthrosc Tech. 2016 Dec; 5(6): e1235?e1238)
当施設では大結節を内側化した部位に、棘上筋腱をsuture bridge法で固定し、さらに結節部位に採取したグラフト:大腿筋膜(3cm×3cm)を移植し、これもsuture bridge法で固定する、double suture bridge法で行っています。重要な残存腱板の固定も良好であり、再断裂はほとんど見られません。特に、この手術のメリットとして、術中判断で断裂部位の引き出しの程度によって、ASCRとなるか、GAで可能かが決まりそれによって、採取する大腿筋膜の長さが6cm必要か、3cmで済むかが選択できます。

10ccの注射器越しに、関節内にグラフトを誘導します
10ccの注射器越しに、関節内にグラフトを誘導します。
グラフトはスーチャーブリッジ法にて固定します。
グラフトはスーチャーブリッジ法にて固定します。

症例 50代の女性 左肩腱板大断裂

術前

術前

術後6ヶ月

術後6ヶ月

術後3ヶ月で介護の仕事に復帰しました。 MRIにて修復状態は良好です。

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